APIの定義と役割
APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」の略称で、異なるシステム同士が機能やデータをやり取りするための仕組みです。
APIを活用することで、外部サービスの機能を自社システムに取り込んだり、自社サービスの機能を外部に提供したりすることが可能になります。業務効率化やサービス拡張の観点から、多くの企業でAPIの導入・開発が進んでいます。

近年では、Webサービスを外部から利用するためのRESTful API(レストフルAPI)が主流となっています。RESTful APIはシンプルかつ柔軟性が高いため、多くのWebサービスやモバイルアプリケーションのバックエンドとして広く採用されています。
このように、APIはシステム全体の利便性を支える基盤となっており、その重要性はますます高まっています。
APIセキュリティとは?
APIセキュリティとは、APIを経由して発生する不正アクセスや情報漏えいなどのサイバー攻撃を防ぐための対策や設計指針のことを指します。外部システムとつながる「入り口」であるAPIに対して適切なセキュリティを実現するには、多層的なアプローチが必要です。
具体的には、ユーザーやアプリケーションの身元確認を行う認証、アクセス可能な範囲を制限する認可、個人情報データの暗号化によるプライバシー保護、時間あたりのAPIリクエスト数の制限によるサービス安定化など、さまざまな対策を組み合わせて実施することが重要です。
特に近年はクラウドサービスの普及や、複数の小さなサービスを組み合わせる開発手法が増加しています。適切な対策を計画的に実施することで、APIを介したセキュリティリスクを低減することができます。
APIセキュリティが重要な理由
APIは現代のシステム連携において多くの役割を果たしていますが、同時にセキュリティリスクも抱えています。なぜAPIセキュリティが重要なのかを具体的に見ていきましょう。
現代のシステムにおけるAPIの普及
クラウドサービスの利用拡大やマイクロサービスアーキテクチャの普及により、APIはさまざまな企業のシステム構成に組み込まれています。
私たちの日常生活でも、スマートフォンアプリで天気情報を取得する際に、気象データ提供元のAPIを通じて最新情報を取得しています。また、企業が社内の勤怠管理システムとクラウド型カレンダーサービスを連携させる際にもAPIが活用されています。さらに、オンラインショッピングにおいては、決済代行サービスとの連携をAPI経由で行うことが一般的です。APIへのセキュリティ対策は、すべての開発・運用現場で必要不可欠な取り組みとなっています。
APIの利用が拡大するほど、セキュリティ対策の重要性も比例して高まります。
APIが攻撃対象となるリスク
APIは直接的に機密データや業務ロジックにアクセスできる場合もあるため、攻撃者にとって恰好の的となります。
APIの脆弱性が悪用されると、機密情報の漏えいや不正アクセス、サービス停止など深刻な被害をもたらす可能性があります。
APIを提供・使用する企業にとって、具体的かつ効果的なAPIセキュリティ施策の実施は急務となっています。次に、これらの脅威に対する具体的な対策を見ていきましょう。
APIに対する主な脅威と対策
APIを公開・利用する際には様々な脅威が存在します。APIセキュリティに取り組む際には、信頼性の高い公的ガイドラインを参考にすることが重要です。
IPA(情報処理推進機構)が公開する「API標準設計ガイド・基礎編」では、HTTPS通信の必須化やレートリミット、APIキーによる認証といったベストプラクティスが紹介されています。また、国際的にはOWASPが提供する「OWASP Top 10 API Security Risks」が広く活用されており、認証の不備や過剰なデータ公開など、APIに共通する脅威と対策が体系的に整理されています。
これらのガイドラインをもとに、企業は自社システムに即したAPIセキュリティ施策を講じることが求められます。
代表的な脅威としては、「認証」・「認可」の不備、データ漏えい、DDoS攻撃、インジェクション攻撃、ビジネスロジックの悪用などが挙げられます。
主な脅威ごとに具体的な対策を見ていきましょう。
認証・認可の不備
APIセキュリティにおいて最も基本的かつ重要な要素が、適切な認証・認可の仕組みです。不適切な認証や権限管理は、悪意ある第三者によるなりすましや不正アクセスの原因となる可能性があります。
実際のセキュリティインシデントでは、APIキーや認証トークンが漏えいしたり、権限認可の確認が不十分なために一般ユーザーが管理者機能にアクセスできてしまうケースが多く報告されています。
具体的な対策としては、OAuth 2.0やOpenID Connectなどの標準的な認証プロトコルの採用、JWTを活用したトークンベースの認証、多要素認証の導入が効果的です。
また、権限の細分化(スコープ設定)により必要最小限のアクセス権限のみを付与することや、トークンの有効期限設定と失効処理の仕組みを導入することも重要です。
データ漏洩
暗号化されていない通信経路や、過剰な情報を返すレスポンス設計により、機密情報が漏えいするリスクがあります。 特に個人情報や機密情報を扱うAPIでは、データ漏えい対策が必須です。
APIの通信が平文で行われている場合、ネットワーク上での盗聴によって情報が第三者に流出する恐れがあります。また、APIのレスポンスに必要以上の情報(内部IDや非公開データなど)を含めてしまう「過剰露出」も、情報漏えいの原因となります。
対策としては、まずHTTPS(TLS/SSL)による通信の暗号化を必須とし、レスポンスに含まれる情報を必要最小限に抑えることが求められます。また、エラーメッセージなどログの出力内容には、詳細な情報を含めないようにすることも重要です。さらに、APIゲートウェイやWAF(Web Application Firewall)を導入し、不審なトラフィックを検知し、ブロックする仕組みを整えることが効果的です。
WAFについてもっと詳しく知りたい方はこちら!
「WAFとは?知らないとまずいセキュリティ製品を初心者にもわかりやすく解説」
https://lp.cscloud.co.jp/va/knowledge/api_security/waf/
DDoS(DoS)攻撃
APIエンドポイントに対する大量のリクエスト送信により、システム全体のリソースを枯渇させサービスを停止させるDDoS攻撃も深刻な脅威となります。APIは外部に公開される性質上、DDoS攻撃のターゲットになりやすい傾向があります。
DDoS攻撃が成功すると、APIを利用したサービスが一時的にダウンし、業務の中断やサービス提供停止といった影響をもたらします。特に基幹業務や重要なサービスに関連するAPIがダウンした場合、企業の信頼性低下や経済的損失につながる恐れがあります。
対策としては、APIゲートウェイによるレート制限(一定時間内のリクエスト数制限)の設定や、異常なトラフィックパターンを検知するための監視体制の構築が重要です。また、WAFの導入により、不正なリクエストをフィルタリングし、ブロックすることも効果的です。
DDoS攻撃についてもっと詳しく知りたい方はこちら!
「DDoS攻撃とは?読み方や特徴、DoS攻撃との違い、対策方法までわかりやすく解説!」
https://lp.cscloud.co.jp/va/knowledge/api_security/ddos/
インジェクション攻撃
リクエストパラメータに不正なコマンドを埋め込むことで、データベースやサーバへの不正操作を試みるインジェクション攻撃(SQLインジェクションやコマンドインジェクションなど)は、古くからある攻撃手法ですが依然として脅威となり得ます。
API経由でデータベースやシステムコマンドにアクセスする際、ユーザーからの入力値をそのまま処理に使用すると、攻撃者は特殊な文字列や構文を含んだリクエストを送信し、意図しない操作を実行させることができます。たとえば、SQLインジェクションでは、APIのパラメータに不正なSQLコードを埋め込むことで、データベースから情報漏えいや改ざんを引き起こす可能性があります。
具体的な対策としては、まず入力値の検証(バリデーション)を行うことが有効です。これにより、予期しないデータや不正なデータが処理されるのを防ぐことができます。
次に、サニタイズ(特殊文字の無害化)を実施することで、悪意のあるコードがシステムに影響を与えないようにします。
また、SQLインジェクション攻撃を防ぐためには、プリペアドステートメントの活用が有効です。これは、SQLを事前にコンパイルし、後からパラメータを安全に追加する方式です。さらに、SQL文中に変数を安全に埋め込むプレースホルダの使用が推奨されます。これらの対策を組み合わせることで、セキュリティリスクを低減できます。
インジェクション攻撃を含む、サイバー攻撃についてもっと詳しく知りたい方はこちら!
「知っておきたい39種類のサイバー攻撃|その対策とは?」
https://lp.cscloud.co.jp/va/knowledge/api_security/cyber_attack_type/
ビジネスロジックの悪用
正規のAPI仕様に則ったリクエストでも、設計の抜け穴を突かれることでサービスの悪用や不正利用が発生するリスクがあります。たとえば、割引処理の繰り返し実行や、API連打による不当な利益取得といった問題が起こり得ます。
このタイプの攻撃は、一般的なセキュリティ対策では検出が難しいという特徴があります。通常のファイアウォールやWAFは、不正な構文や明らかに異常なリクエストを検知できますが、業務ロジック上の抜け穴を突く攻撃は、正規の操作の範囲内で行われるため、検知が困難です。
利用状況のログ分析や、想定されるユースケース以外の操作に対する制御を事前に検討するといった対策が必要です。また、定期的な脆弱性診断を実施し、ビジネスロジックの脆弱性を発見・修正することも重要です。
APIセキュリティの最新動向と対策活用
APIセキュリティは進化を続けており、AIによる高度な防御が注目されています。
また、脆弱性診断による継続的なセキュリティチェックも一般化しつつあります。
企業は、時代に即したセキュリティ戦略を柔軟に取り入れることが求められます。
AI・機械学習を活用した脅威検出
近年、APIセキュリティにおいてAI・機械学習を活用した脅威検知の導入が進んでいます。
従来の静的なルールベースの検知では対応が難しい複雑な攻撃パターンや未知の攻撃に対しても、機械学習を活用することで異常なAPIアクセスのパターンをリアルタイムで検出し、攻撃兆候を早期に捉える技術が実用化されつつあります。特にゼロデイ攻撃のような未知の脅威への対処手段として注目されています。
企業のAPIゲートウェイやセキュリティ製品へのAI機能の活用が進み、より効率的かつ効果的な脅威検出が実現されると期待されています。
脆弱性診断で潜在的リスクの可視化と対策
APIを開発・運用する際には、第三者機関によるAPIの脆弱性診断の実施が効果的です。従来のWebアプリケーション向け脆弱性診断とは異なり、API特有の脆弱性に焦点を当てた専門的なアプローチを行うAPI特化の脆弱性診断を提供している企業も存在します。
診断を通じて、認証機構の不備や設計上の盲点が浮き彫りになり、セキュリティ上の抜け穴を事前に発見できます。
定期的な診断は、APIの設計変更や新機能追加に伴うリスクの把握にも役立ちます。
APIの脆弱性診断なら「サイバーセキュリティクラウド脆弱性診断サービス」
APIの脆弱性診断は、APIに関する専門的な知識と経験が求められる領域です。
サイバーセキュリティクラウドの脆弱性診断サービスでは、API特有の攻撃手法に対応した診断が可能です。以下のような特徴があります。
・ツール診断とセキュリティ専門家による手動診断を組み合わせたハイブリッド診断により、効率的かつ正確な潜在的リスクの検出が可能
・OWASP Top 10 API Security Risksに準拠した診断基準により、最新のセキュリティリスクに対応
・API仕様書がない状態でも診断可能
さらに、診断結果を基にAPI仕様書を作成し、開発ツールで利用可能なOpenAPI(Swagger)形式で提供することも可能です。これにより、セキュリティ診断だけでなく、APIの継続的な運用・管理もサポートしています。
APIセキュリティの強化を検討中の企業様は、ぜひご相談ください。